生きる喜びを与えたい2
障害があろうと、誰もが当たり前に暮らしていける社会。そんな思想のソーシャルインクルージョン。それに向かってさまざまな生涯分野の人々が集まり話しあう。その名は自立支援会議。
彼らは障害者たちがどうやって自立して暮らしていけるかを議論する。僕は参加したことはないけれど、間違いなく誰もが真面目に、真剣に話し合っているのだろう。そしてさまざまな政策を掲げて実施していこうとする。そうして社会を少しずつ変えていこうとする。それは素晴らしいこと。
でも僕はそれをイメージした時、ふっと素朴な事を考える。障害を持っていても当たり前に暮らせるってことって、ホントはもっと簡単なこと、単純なことじゃないのだろうかと。それは、
もっと周りの人達が少しだけ優しくなればいい
ことだけなのではないかと…。でなきゃ次から次へと政策の内容を覚えて、法律ができれば、その法律の勉強して…(法律に目を通したと何に眠くなる僕としては)、あまりにうっとうしい。
「逝きし世の面影」(渡辺京二 著)の中に次のような一説が出てくる。(以下転載)
その安息と親和の世界には、狂人さえ参入を許されていた。フォーチュンはディクソンら友人とともに鎌倉を訪ねたが、町中に入ると女が一人道路の真ん中に坐りこみ、着物を脱いで裸になって煙草を吸い始めた。明らかに気が違っているのだ。フォーチュンらが茶屋で休んでいると、彼女がまた現れて、つながれているフォーチュンらの馬に草や水を与え、両手を合わせて馬を拝んで何か祈りの言葉を呟いていた。彼女は善良そうで、子供たちもおそれている風はなかった。フォーチュウんたちはそれから大仏を見学し、茶屋に帰って昼寝したが、フォーチュンが目ざめて隣室を見やると、さっきの狂女が、ぐっすり寝込んでいる一行の1人の枕許に坐って、うちわを仰いでやっていた。そして時々手を合わせて、祈りの言葉を呟くのだった。彼女はお茶を四杯とひとつかみの米を持って来て、フォーチュン一行に供えていた。「一行がみんな目を覚まして彼女の動作を見つめているのに気がつくと、彼女は静かに立ち上がって、われわれを一顧だにせず部屋を出て行った」。狂女は出入り自由で、彼女のするところを咎めるものは誰もいなかったのだ。当時の文明は「精神障害者」の人権を手厚く保護するような思想を考えつきはしなかった。しかし、障害者は無害であるかぎり、当然そこに在るべきものとして受け入れられ、人々と混ざり合って生きてゆくことができたのである。 (転載終了)
もちろん当時見世物小屋として、障害児者を見せものとしてしまうようなこともあったのだろうけど、当時はやはり人々の心は今よりももっと穏やかで、許容する範囲が広かったのだと思う。
僕らはつくづく江戸時代末期から明治初期にかけ、ものの考え方を変えてしまった民族なんだ。欧米化を手本として。日本人の良さをかなぐり捨ててしまった。けれども、どこかにその心は今も残っているのではないかと期待もしてしまう。
もしこの心を今の僕たちが取り戻すことができたならば、障害者の法律など作る必要もないのにと思ってしまう。そもそも障害者のための法律で保護するという時点で区別している。
そう、誰もが取り戻せばいいだけなのだ。新しい形にデザインしなおして時代にあうようにすればいい。そして誰もがほんの少し人に、社会に、自然に、そして地球にやさしくなれば、それだけで日本は変わる。
でもって、やはりそこに必要なのは「知足の心」なんだよな…。足るを知る。そして満たされる。そしたら周りに少し返そうとする。それが伝播する。それだけのことなのだ。
心が満たされる。それを勘違いしてフトコロが満たされることばかり考えてしまっているのが現状…。そんなもの上着一枚剥がせばあっという間になくなってしまうのに…。それに比べ心の奥はのぞけばのぞくほど深くなる。宇宙と同じく広大に深遠になる。そんな心が「知足」ひとつで満たされるって、すごいこと。
この違い、似たような場所にあるけれどもかなりの違い。心を落ち着けのぞいてみれば、そこは穢れなき静寂の世界。
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